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裁判というと、「戦い」というイメージを持たれるかと思います。ナマの人間同士のトラブルなので当事者間では感情的な対立が起きるのも当然です。しかし、相手に対する憎しみを裁判所でつらつら述べたり、それらを書いた文書を裁判所に提出しても裁判には有利とはなりません。裁判で主張すべき主なものは「要件事実」というものです。やさしく言うと、自分の希望する結果を裁判所に認めてもらうために、ある法律のある条文に当てはめることができる具体的事実です。つまり、「戦い」には違いないのですが、感情的な非難合戦ではなく、法律上の主張による攻撃防御合戦を行なうわけです。
依頼者と打合せ中、依頼者は感情が高じて相手方の様々な不平不満を言ってくることがあります。その中にヒントがあることもあるし、また話すことで依頼者が精神的な満足感を覚えるので、できるだけそれらをお聞きしておりますが、度を超えたものとなると中断していただくこともあります・・・。
また稀に、作成された裁判書類(訴状、答弁書、準備書面と呼ばれています)を見て「あれほど強く言ったことが何も書かれていない」と不満を持たれるケースも見受けられます。その場合は上記の要件事実のご説明をさせていただいております。
これらは、裁判が「ケンカ」とは違うことを理解していただくためにどうしても必要なことなのです。
さて、裁判の終わり方としては大まかに分けると「判決」と「和解」があります。勝訴の可能性が高く、かつ相手に支払能力がある場合は、「判決」を選択するのが一般的でしょう。しかしそうではない場合は、「和解」を選択することが多いと思います。日本の民事訴訟の第一審での判決と和解の割合は6:4とも言われています。
和解のメリットは、判決に比べ相手方の任意の支払いが期待できることです。相手がこれなら払えそうだと裁判官に言う内容だからです。もし相手方が和解内容どおりの履行を怠った場合は、裁判所が作成した「和解調書」に基づき強制執行をすることができます。つまり訴訟終了後の効果という点では、「和解」と「判決」は同一です。「和解」という言葉は、日常用語と法律用語では似て非なるものです。前者は「仲直り」という意味合いが強いです。ですので、「裁判官から和解の勧めがあるがどうしますか?」と言われると「和解なんてとんでもない、あいつとはもう縁を切ってもいいんだ!」と憤る方もいるかもしれません。また、テレビニュースで「裁判所で和解が調いましたが、被告は謝罪の言葉を全く述べなかったので、これは和解ではありません」という発言も聞くことがありますが、法律上は誤った考えです。
裁判上の和解は、時間と費用を節約し、任意の履行を促し、柔軟な解決方法を選択できる、裁判手続きの一種とお考えください。
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